現実,そして意識とは何でしょうか.人間はどの様に世界を認識しているでしょうか.認識論哲学はそのテーマをめぐって展開されてきましたが,時に心と認識は相反する反応を示すことがあります.近代化が進展するにつれて,網膜に写っている情報だけでは,世界は十分に把握できないことが幾度となく言われてきましたが,視覚外の感覚を具体的に表現の次元に落とし込む可能性は,近年のメディア・アートの登場によって積極的に開かれてきたと見ることができます.
この作品では,視覚や聴覚による認識を超えて,身体が動かされること,身体を動かすこと,によって世界はどう把握されるのかを探究します.ミクストリアリティの表現として,慣性チェア+HMDのセットと撮影技術の組み合わせに着目し,身体における知覚と世界の関係を,鑑賞体験を通じて考えます.それはまた,映像や音声情報だけが偏重されている現代の情報化社会に対して,人間の感覚のあり方が今後どうあるべきかを考察するものでもあります.
作品鑑賞は,一人ずつ専用の慣性チェアに座り,HMDを装着して体験します.慣性チェアは,この作品用に今回オリジナルで製作したもので,HMDのVR映像と連動した動きを作り出しますが,それらを全てコンピュータ・プログラムで制御しています.視覚・聴覚だけでなく,体感も含めた新たな動きの感覚を,この体験から感じることができます.
[特別展示]東京工芸大学 色の国際科学芸術研究センター
身体感覚のプレニチュード
〜カラーリサーチがひらくインタラクション
Credits
コンセプト,ミュージック:真鍋大度(Rhizomatiks)
テクニカル・ディレクション:石橋素(Rhizomatiks)
VRチェア制作:石橋素,坂本洋一(Rhizomatiks)
VRチェアソフトウェア:浅井裕太(Rhizomatiks)
360°カメラシステム:花井裕也(Rhizomatiks)
360°カメラCG:堀井哲史(Rhizomatiks)
プロジェクト・マネジメント:小幡倫世(Rhizomatiks)
ダンサー:SAYA,KAORI,emmy,MARU,YU(ELEVENPLAY)