by Daito Manabe

リード

sonicPlanet は、音楽とテクノロジーのあいだから生まれる、

新しい創造と研究の形を探求するためのプラットフォームです。

これまでの活動と背景

これまで私は、クリエイティブディレクター、テクニカルディレクター、アーティスティックディレクター、

映像監督、オーディオビジュアル・プログラマー、作曲家など、

プロジェクトによってさまざまな立ち位置で約25年間にわたり活動してきました。

そのなかで、展覧会、ライブパフォーマンス、インスタレーションなど、

多様な文脈に応じて数百におよぶ音響や映像ソフトウェアを開発してきました。

それらの多くは、展覧会のために、クライアントのために、特定のミュージシャンのために、

あるいは自分自身の作曲やパフォーマンスのために設計された、

オートクチュールのような実験的システムでした。

それぞれのソフトウェアは本当に多様でしたが、

その積み重ねの中には、より普遍的な構造や、

創造の原理として抽出できる知見が眠っています。

私のモチベーションは、その知見を再構築し、

誰もが使える“創造のためのツール”として、社会やコミュニティに還元することにあります。

これまでは最終的なアウトプットを共有することが中心でしたが、

これからはその過程にある試行錯誤や発見の面白さも共有していきたいと考えています。

創造のプロセスをともに楽しみながら、

そこから生まれる新しい発想や手法を、

より多くの人たちと分かち合っていくことを目指しています。

近年のAI技術の発展によって、創造行為の意味そのものが拡張しつつあります。

今こそ、創造とは何か、どこまでが人間の想像力であり、

どこからがアルゴリズムとの共創なのかを問い直し、

自分自身の考えを更新する必要があると感じています。

そして、sonicPlanet の活動では、

普遍的な構造の探求やツールの開発を進める一方で、

これまで行ってきたオートクチュールのような一点ものの制作も続けていきます。

2004年からのコラボレーターであり、長年の友人でもある Sinan Bokesoy の、

音楽と音響技術に関する深い洞察と精緻な技術によって、

これまで想像の域にあった表現が現実の創造へとつながり、

新たなオーディオビジュアル表現が生まれつつあります。

それは、実際の現場やアーティストとの協働の中でしか生まれない発見があり、

その“個別性の中にこそ”新しい原理や可能性が見出せると信じているからです。

こうした個別的な実験と、普遍的な構造の探求を行き来しながら、

創造の本質をより多角的に捉えていきたいと考えています。

音楽と構造の哲学

音楽は、思考と感覚が交わる場所にあります。

それは、理性と感情、構造と感性の両方を行き来する創造の場でもあります。

自然言語との組み合わせが有効な場面もありますが、

音楽は音そのもので成立する、時間の流れの中で展開する抽象的な表現であり、

同時に、時間軸を持たない数学的な構造そのものが

表現となりうる稀有なアートフォームでもあります。

こうした二重の性質をもつ音楽の原理は、

音そのものにとどまらず、映像、光、身体、環境、そして都市といった

異なるスケールやメディアにも通じるものがあります。

音楽と他のメディアとの関係性を改めて見つめ直し、

音と構造がもつリズムや秩序を、

視覚・動き・空間・データ・数理的構造など、

多様な現象や記述体系へと拡張していくことで、

新しい創造の言語を生み出せると感じています。

たとえば、音を光や動き、空間の振る舞い、

さらには数値的な関係性として再構成する試みは、

音楽という概念そのものを広げ、

私たちの感覚や認識の仕組みを問い直す行為でもあります。

この考え方は、音楽と数学、音響と構造、

そしてそれらを媒介するテクノロジーとの関係を再定義し、

新しい思考と創造の地平を開くという、

sonicPlanet の理念へとつながっています。

sonicPlanet 設立について

音楽の創造性を広げ、研究や実験的な活動を続けていくために、

尊敬する友人であり audio applications designer and developer の

Sinan Bokesoy と共に、ロンドンで sonicPlanet を設立しました。

大学時代、クセナキスに影響を受けて

数学と音楽の関係を探っていたことが、今の自分の原点になっています。

この新しい挑戦は、自分にとって大きな一歩であり、

原点に立ち返るような感覚でもあります。

AIで音楽を作るのがとても簡単になった今だからこそ、

音色を変換したり、過去の楽曲を模倣するだけではなく、

真に創造的な新しいツールが必要だと感じています。

私たちが目指しているのは、

「誰でも簡単に音楽を量産する」ことではありません。

sonicPlanet のツールは、単に音楽を作るための手段ではなく、

音楽という概念そのものを拡張し、他のメディアや構造との関係性を再構築する試みです。

私たちの取り組みによって、

“音楽”という言葉が示す範囲そのものが広がり、

新しい表現や思考、

そして創造のインスピレーションの源になれば幸いです。

sonicPlanet は、音楽とテクノロジーのあいだから、

新しい表現の可能性を探っていきます。

これからの方向性

音楽の新しい表現や可能性を追求することは、

単に音楽の進化にとどまらず、

映像、ダンス、建築、そして都市空間など、

身体や環境を媒介とした表現全体の拡張にもつながると考えています。

sonicPlanet は、AI時代における“音楽”という概念を問い続け、

人間とテクノロジーのあいだに新しい創造の回路を描いていきます。

それは、音と構造、感性と知性、身体と環境のあいだに生まれる、

未来の表現を見つけるための実験でもあります。

https://www.sonicPlanet.com