Work 2
神経細胞による自律型ロボット制御実験
人工知能とは異なるアプローチで、生命システムによる知的な制御の可能性を探ります。生物の持つ適応学習能力は、リアル社会などの予測不可能な環境での柔軟な対応を可能にしています。この特性を活かし、実際の脳神経回路をロボット制御システムの中核として組み込むことで、新しい制御アーキテクチャの実現を目指します。
生物の脳は、外部からの情報を行動しながらリアルタイムに処理し、適切な次の行動を生成する優れたシステムです。このプロジェクトでは、脳オルガノイドという小規模な脳神経細胞ネットワークを用いて、生命システムならではの学習と適応のメカニズムを探求します。
- 2025
- 脳オルガノイド、四足歩行型ロボット、カメラシステム、電気刺激装置
- 3.5m × 3.5m
解説
本展示では、培養脳神経細胞(脳オルガノイド)を用いた自律型ロボットの制御実験を提示します。実験システムは、脳オルガノイドを制御の中核として使用し、四足歩行型ロボットの障害物回避行動を実現します。
システムでは、天井設置カメラにより同ロボットのリアルタイムの位置情報を取得し、これを電気信号として脳オルガノイドに入力します。学習は、ロボットの仮想的な視野内における自由に動ける空間の存在を電気刺激として与えることで行われます。障害物が存在する空間では刺激が減少し、衝突直前にはほぼ完全に刺激が消失します。この仕組みにより、「電気刺激の存在自体が報酬」として、「その減少が罰」として機能し、脳神経細胞は自然な形で障害物回避行動を学習します。
展示空間では、自律走行するロボットシステムとともに、神経細胞の活動状態や移動軌跡がリアルタイムで可視化されます。システムが稼働している際は、生体神経回路による学習過程を直接観察することができます。
技術詳細
ハードウェア
- ウェブカメラ
-
GPUワークステーション
- ロボット位置解析
- 刺激パターン変換
- 可視化
- 制御信号変換
-
サーバー (API)
- 刺激コマンド生成
- 前処理
- スパイクカウント
- 高密度微小電極アレイシステム
- 脳オルガノイド (2個連結)
- プロジェクター
- Unitree Go2